top of page
​Chapter 1
とある村に物静かで、少し夢見がちな少女が住んでいました。
少女は妹と弟、そして優しい父と母に囲まれ幸せに暮らしていました。

ある日のことです。
少しだけ大人になった少女は汽車に乗り、一人旅に出かけました。
それはずっと夢見ていたことでした。

村にはない海や、丘や、大都会……そんなものを見てみたかったのです。
それは夢のような時間でした。世界はなんて美しいのだろう。
幼い彼女はそう思いました。

しかし、帰ってきた少女を待っていたのは絶望でした。
彼女が旅に出ているまさにそのとき、毛狩り隊が村を襲ったのでした。
村は静まりかえっています。少女は急いで自分のうちの帰りました。
ですが、そこももぬけの殻でした。
家族が残していったであろう手紙を残して。少女は一人きりになってしまったのです。

「シオン。逃げて。そしてどうか生き延びて」

少女は手紙をぎゅっと握りしめました。逃げなきゃ。生きなきゃ。
そうして、少女は過酷な逃亡の旅に出たのでした。 
bottom of page